お姉さんがなかなか僕に日記を書かせてくれない。きっと僕がおねえさんの秘密などをばらしてしまうと思っているからに違いない。たとえば、最近寝ているか遅く帰ってくるかなのだ。人間が僕より寝るようになったらおしまいだと思う。
お姉さん昨夜は家に帰ってきて、ちょっと寂しそうにしていた。僕は眠かったが、話を利いてあげようと思い、おねえさんの前に座った。お姉さんが言うには、ジョージア大学で学んでいるお友達たちが旅立ちの日を迎えているからだという。そうか。僕のところにいる雁のぬいぐるみは僕の友達だが、彼が旅立ったら寂しいな、気持ちは分かった気がした。
最近お姉さんはあまり僕にかまってくれない。だから毎朝洗面所の前で横になって待ち伏せして、おねえさんが通ると爪でおねえさんの服を釣るのだ。ビヨーンとズボンのすそや、ストッキングが伸びるからやめられない。お姉さんはビヨ〜ンと布切れを伸ばしていると結構いやがる。「ストッキングに穴が開いていたの気付かないで学校に行っちゃったじゃないのー」、といって怒っている。この遊びがいやであるのなら、僕をもっとかまってくれればいいのだ。最近かくれんぼゲームもネズミ捕りゲームもしていないのだから、布きれ伸ばしゲームくらいしたっていいではないか、ケチ。