お姉さんのコンピューターがまた日本語機能を破棄したらしい。お姉さんはしばらくパニック状態に陥っていた。僕は日記上でお姉さんの悪口を言って鬱憤を晴らしたかったが、お姉さんに英語でなら書いてよしと言われ、アメリカ生まれではあるが、それもかったるいのでお姉さんがコンピューターを直すまで待つことにした。これは、10日間の僕の日記のブランクのいいわけである。
お姉さんは最近忙しそうである。なかなか家に寄り付かない。おかげで僕は悠々自適なシングルライフを満喫している、しかし、ご飯が遅くまで食べられないのは難点である。お姉さんが僕のご飯を入れた大きなタッパーウェアの箱のふたさえ開けておいてくれたらセルフサービスで食べられるのに。(そんなことしたらあなたは際限なく食べるでしょ!おねえさんより)
お姉さんのベートーベンの理由がわかった。どうも柄にもなく、趣味の音楽を始めたらしい。下手の横好き、アセンズ市の市民オーケストラに入ったらしく、この前の週末にコンサートがあったらしい。それで黒づくめの格好をして家を出たのか。アメリカの市民オーケストラはずいぶん日本と違ったらしい。お姉さんはすっかりまた文化の違い、考え方の違いに感心しながら僕にいろいろ話してくれた。日本では6ヶ月かけて、市民オーケストラのメンバーがみなで曲を作り上げるということをしていたらしい。コンサートの前も会場に朝からみなで集まって本番に向かってみなで盛り上がってコンサートに挑んでいたらしいが、アメリカの場合、練習はたったの6回。。ひどい状態であっても、コンサートの当日の朝、2時間だけ練習して、後は本番でね、と普通にメンバーは帰ってしまったらしい。8時からのコンサートにメンバーは7時50分くらいから集まり、舞台裏でのチューニングもなく、本番に突入したらしい。あれよあれよと本番になり、2時間のコンサートのあと、またばらばらに解散、打ち上げも何もなし。なんだか、個人が楽しむためのオーケストラで、みなで仲良く作り上げるという日本の感覚とはずいぶん違ったらしい。さすが個人主義の国アメリカだとお姉さんは感心していた。