イヌの攻撃行動

先週の木曜日と金曜日は人間をかむというイヌが私の勤める行動学セクションに来ました。木曜日に来たワンちゃんは7ヶ月のジャーマンシェパードくん。このワンちゃんは獣医さんに連れて行かれると怖がるし、人が飼い主さんあるいはワンちゃんに近づくとうなるし噛み付くとのことでした。また、飼い主さんから引き離されるとパニックにもなるとのことでした。他にも公園でイヌにあうと襲い掛かろうとするようで、トレーナーさんに言われて飼い主さんはチョークチェーンでワンちゃんの首を絞めてしかるというトレーニングをしていました。
私たちの診断は、このワンちゃんは怖さのあまり他人やイヌが近づくとうなったり噛み付こうとしたりしているという、恐怖から来る攻撃行動としました。人は怖い、イヌも怖い(イヌを見るたびに首絞められている)ということで攻撃行動をすることで人もイヌも近づけないようにしていたのです。恐怖から来る攻撃行動は、犬の攻撃行動のナンバー1の理由です。権勢症候群とかアルファーシンドロームなどと昔は言われていましたが、研究された今は、ほとんどの場合は犬が人間の上に立ちたいのでなく、恐怖と学習した行動と分かるようになりました。
治療は痛みなどをまったく伴わないトレーニングと獣医さんではゆっくり物事を進め、わんちゃんを怖がらせないという事が大事というお話をしました。
獣医さんで攻撃するわんちゃんは多いのが現状です。これは、パピークラスやパピーパーティーを開催して飼い主さんにイヌの行動を理解していただく、またイヌの扱いを知っていただく、そして獣医やスタッフたちも子犬を無理に押さえつけたりせずにゆっくりと褒美を与えながらワクチンを打ったり、体温計を入れたりすることで防げる問題です。
アメリカではまだまだ獣医の現場で、イヌに厳しくしてしまう、暴れる仔犬を怒鳴りつけて床に押し付けてワクチンを打つというのがなされています。学生たちに子犬の扱い方1つで将来的にどんなに診療が楽になるか、をラウンド(症例検討勉強会)で教えているのですが、新しい行動学からのアプローチが徐々に広がることを願っています。