僕の災難

この前の土曜日はお姉さんが朝からそわそわしていた。彼女にデートでもあるのかと思っていたが、着ているものはあまりデート向きではない穴の開いたジーンズにTシャツである。なんだろうと観察していたら、棚の奥からIAMSの猫パックを出してきた。チキン味のパックに入ったキャットフードだ。お姉さんが袋を開けたとたんにいい香りが部屋中に漂った。僕の心は狂喜乱舞し、おねえさんに甘えに行ったら、お姉さんは早速一口だけ僕にチキンの塊をくれた。うまい〜!僕はもっとほしいと思い、おねだりをしたら、ケチで僕にご飯を沢山くれないお姉さんが、小さなお皿に猫用チキンを盛って、僕が嫌いな猫キャリアーの奥に置いた。究極のチキンのためであれば仕方がない、僕は猫のキャリアーの中に入っておいしいチキンを平らげた。お姉さんはおいしさにうなっている僕を見ながらニヤニヤしている。
朝9時10分になり、お姉さんは出かける支度を始めた。僕は朝のミルクがもらえることを期待し、またお姉さんがあのチキンをくれるのではないかという期待もあってお姉さんの足元に飛んでいった。お姉さんは期待通りにあの究極のチキンをがっぽりと小さいお皿に入れて、またキャリアーの中に入れてくれたのだ。僕はキャリアーに飛び込んでいった。しかし、今回は、僕が中で究極のお食事に興じている間にお姉さんがキャリアーのふたを閉めた。とりあえず食べ終わって周りを見渡したら僕は完全にキャリアーに閉じ込められていることが判明した。しまった、食欲に負けた僕が悪い。
お姉さんはキャリアーに入れた僕を担いで駐車場まで行き、車の助手席に僕を乗せ、運転を始めた。僕は車に乗るのが大嫌いだ。いつもろくなことがないから嫌いだ。今回も例外なく、お姉さんの職場に連れて行かれた。しばらく動物臭いところで待たされた後、僕が出されておかれたのは銀色の冷たい机の上。手術台とも言うらしい。「何が起こっているのだ〜!!にゃー」と叫ぼうとしたら、。また例の究極のチキンが目の前にあるではないか、それもお皿に山盛り。僕はまた食欲に負けチキンにがっついてしまった。
背中になんとなく痛みが走って僕は食べながらうなった。そのすぐあとお姉さんは僕を抱き上げ、僕を僕のチキンとともにまたキャリアーにほおり込んだ。
家に帰ってお姉さんにあれは何であったのか、説明もなしに猫を究極の食事で釣るなと抗議した。そしたらおねえさん「マイクロチップを入れたのよ、小太郎、日本に行きたいでしょ、ゆき子ちゃんやくろニャンちゃんに会いに。。」と言うではないか。僕はこれでマイクロチップという機械を入れた猫になったらしい。サイボーグ小太郎。これが何故日本に行くことと関係があるのかわからないが、そのうち分かるかもしれない。
「次は狂犬病の注射よ〜」とお姉さんが言っている。僕は、「犬」の注射なんか打たないよ。狂猫病なんてないからね〜だ。(小太郎君、猫も狂犬病にかかります、一応獣医のおねえさんより。)