うなる子犬

前の日記で紹介した若き女性外科医のR先生、3ヶ月の子犬の心臓外科のオペをしたのはいいけれど、この幼いメスの子犬ちゃんデイジーに翻弄されているらしいのです。学生やテクニシャンが体温を測ったり、身体検査を始めると、「うーーーー」。おかゆ状のご飯を食べさせているときも、無理に上を向かせて大量のおかゆを口に無理に入れて10分間上を向かせた状態で押さえ込んでいるからその間も「うーーー」(巨大食道症があるために犬を上を向かせた状態でおかゆ状のご飯をあげないといけない)、デイジーちゃんはテクニシャンさんたちや担当の学生さんに 事あるごとに噛み付いてくるらしいのです。行動学が専門の私に何とかしてくれという話が来ました。院内での紹介は結構珍しいことなので(実は皆力ずくで押さえつけるので、私たちという専門家がいるのに、あまり私たちの知識や技術を使ってくれないという問題があるのです。。)、張り切って攻撃行動対策に乗り出しました。私が観察した結果、子犬ちゃんは痛みと病院にいる怖さから、抑えられたりいじられたりすると、うなって噛み付いて逃げようとしているだけということが分かりました。ICUのテクニシャンの人たちは「支配行動だ!」などといって犬を殴りつけていましたが(ジョージアはちょっと野蛮な土地柄です)、違うから、力ずくでなく、もっとやさしく抑えて、大きい注射器におかゆを入れてお座りをさせた状態でゆっくりご飯を上げながら子犬がご機嫌がいいときに体温はかったりしたら?というアドバイスをしました。学生の前でご飯作戦を開始したら、デイジーちゃんはとってもいい子に大人しく検査をさせてくれるようになりました。「北風と太陽」のお話しと同じ、力づくで犬を押さえて怖がらせておとなしくさせるより、おもちゃやご飯で気を紛らわせている間にゆっくり治療していったほうが人も動物もストレスなく、やらなければいけない治療ができるのです。
R先生に魔法がかかったようにおとなしく何でもやらせている子犬を見せたら、「すごい」といわれてちょっと調子に乗っているお姉さんでした。でもこの子犬ちゃんのおかげで週末はなしになったお姉さんでした。とほほ。。。