機嫌が悪かったの?痛かったの?

今日の患者さんはシェパードとチャウチャウが混ざったような犬種のふわふわの男の子(オス犬)。飼い主さんたちが食事をしていた際に謝って犬を踏んだか触ったかしたら、うなって飼い主さんに噛み付いたらしいのです。そのほかにも犬をまたいだり、犬の横を歩いたりするとうなることがあるとの事。がつんがつんに飼い主に噛み付いてくるわけではないけれど、このままどんどん攻撃性が出てきて人をかむようになった困るからと病院を訪ねてきました。アメリカは、犬の攻撃性に対してはすごく敏感です。すぐに訴訟問題になるアメリカは、犬が人をかんだりなんかしたら、被害者は、飼い主を訴えて、丸裸にすることも可能です。また訴えた人の意向によっては安楽死を求められることもあります。日本は犬がかんだりうなったりすることに対して寛大です。ちょっと人に対してうなったからといって安楽死させることはありませんが、アメリカは問題行動が安楽死の理由のナンバー1となっています。そのような背景のある文化なので、ちょっとした唸りや噛みつきは大問題です。今回の飼主さんも早めに手を打つべく私たちのカウンセリングを受けに来ました。
うなる頻度は上がったとはいえ、すごくまれで、ごく初期の学習してしまった行動か、それともどこかに痛みがあって、いらついているのかなと考えた私たちは、身体検査(動物に触れる診察法です)をしました。どうも私や獣医の学生が後ろ足を触るとうなってきます。いたいのかな、と疑った私たちは、整形外科の先生に診察をお願いしました。結果、あまり痛みはないであろうとのこと。
結局飼い主さんと犬のコミュニケーションを助けるべく、トレーニングの話をして、いかに犬がうならなくてはいけない状況を避けるかを話して今日はおしまいとなりました。
なんとなく、痛みらしきものはありそうだけれど、そこまでひどくないし、うなってしまう「これだ」という理由も見つからず、なんとなく、すっきりしない症例でした。
1つだけこのわんちゃんのことで付け足し。来院したときは、プロンクカラーという金属状のとげとげが散歩綱を引っ張るたびに首に食い込むような構造の首輪をしてきたのですが(前にもお話したように、人が動物を力でコントロールすべしという哲学が横行しているので、こんな野蛮な首輪を皆平気で使っています、犬が痛そう)、これをもっと犬にやさしい首輪に変えることには成功しました!
日本は仏教の国だからか、犬も人と同じ生き物だからという常識からか、あるいは、家族の一員である動物は家族と同じであるという考えからか、あまり痛みの伴うトレーニンググッズは使われていない気がします。アメリカ人はどうして力づくなのかな?