雷恐怖症

私たちの獣医行動学診療科が雷恐怖症の臨床治験をしているからか、ジョージアは雷が多いからか、雷恐怖症の動物たちがよく来ます。大概飼い主さんたちは雷におびえる動物たちを見ると、何とかしなくちゃと思うらしいのです。結局犬を抱き上げて、「大丈夫よ」といいながら落ち着かせようとしたリ、一緒に寝てあげたりするわけです。私も小太郎がトイレに隠れていた頃はトイレに行って一緒に時間を過ごしたりしていました。しかし!これが実はあまりよくないのです。現在取っている猿の社会行動学の授業でも話は出たのですが、動物たちは互いに慰めあうということはしないらしいのです。これは人間特有の行動なのでしょうね。人間は理由付けを言葉でして、そしてそれに対して慰めるという行動ができます(雷が怖いのでしょう、雷だけだから大丈夫よ、などのように。)が、動物は言葉で何をしているのか説明できないために、恐怖に対して慰めるということはできないようなのです。たとえば、猿の世界の場合、猿Aと猿Bがけんかして猿Aがけんかのあと、負けてしまったから怖がっているとします。猿Aの近しい家族たちは、猿Aはほっておいて、猿Bに近づき、仲直りの助けをすべく猿Bに優しくするそうです。そのことで、猿Aの家族と猿Bの家族は次のけんかの可能性を低くすることができるそうです。
というわけで、動物は恐怖に感じている個人に対して慰めはしないし、慰められても何をされているのか分からないのでしょう(恐怖行動に対して優しくされてもどうしようもない。。。)。というわけで、雷恐怖症の犬たちへの人間の慰め行為は、恐怖行動を助長させることにしかならないので、やめるように飼い主さんには言うのです。しかし、ぶるぶると震えている犬をほっておけというのもかなり飼い主さんにとっては厳しいことだと思います。ただなでながら慰めるのでなく、お菓子の詰まったおもちゃを雷の前に与えておくとか、雷のCDを日ごろから聞かせながら雷の音のある間は、おやつを使ったトレーニングをして動物に楽しい思いをさせてあげるとか、色々と雷の間、動物の気が少しでもまぎれるように私たちはアドバイスしています。あまりひどい場合は薬を使うとずいぶん動物たちは楽になるようです。やはりあまりにも恐怖が強いと、雷は怖くないという学習もできないですしね。
さて、私の小太郎は、ジョージアに引っ越してきたら雷恐怖症がなくなってしまいました。野良猫だったインディアナ時代の経験からか、インディアナの雷は怖かったのでしょうね。しかし地形が平な中西部のインディアナと丘や山があるジョージアの雷の音はどうも違うらしく、いまや彼は雷がなっても平気で寝ています。神経の図太い猫になりました。