人間のストレスも大きい

3週間くらい前に来院したワンちゃんは強度の雷恐怖症に苦しむ犬でした。抗不安剤も3ヶ月飲んでいるのですが、症状はどんどん悪くなっていたのです。飼い主さんが家にいるときはいいのですが、飼い主さんが家にいないで嵐が来た場合、このワンちゃんが検車を食いちぎり、窓を割って外に飛び出し、3重の金網やら木の塀を破ってパニックになるのです。ほとんど命がけのパニック行動です。行動療法をゆっくり入れるなどという悠長なことも言っていられないので、現在も薬の量を増やしたり他の薬を混ぜたりしています(現在SSRI,ベンゾジアゼピン、さらにアセプロマジンも入れる可能性あり)。
さて、本日飼い主さんから「もうやっていられません。犬も愛しているけれど、私の生活は犬に振り回されています。どうしたらいいのでしょうか?犬を愛しているけれどもふとこの犬がいなくなったらどんなに楽だろうと思ってしまいます。このワンちゃんにかけたお金も30万円を下りません、助けてください」という長いメールが来ました。こういうメールをもらうととても心が痛みます。
外科のように切って治すこともできないし、薬ですっかりよくなるというのは精神科では不可能ですし、ちょうどいい配合の薬を探しながら飼い主さんに理解していただいて時間をちょっとかけるしか手がないのです。
行動学、動物のカウンセリング(?)をやっていると、たまに人間の心理学や、ファミリーカウンセリングの勉強もしたいと思ってしまいます。人間の心理学、カウンセリング学のプロではないので、なんて言ったらいいか分からないのです。動物を治すに当たって飼い主さんのストレス、苦しみ、葛藤も聞いていくことはなかなかこちらもつらいのです。