強迫性障害(obsessive-compulsive disorder−ひと/compulsive disorderー動物)

犬の強迫性障害の研究、これが私の専門です。先週の金曜日、強迫性障害のワンちゃんが動物行動学科に患者さんとしてきました。強迫性障害がどんな病気であるかを説明しだすと大変長い日記になるので、勘弁してください。ジャック=ニコルソンとヘレン=ハント主演の恋愛小説家という映画をご存知でしょうか?そこに登場する恋愛小説家ことJ.ニコルソンは強迫性障害の患者ということになっています。強迫性障害は不安症の一つとされています。
犬の場合、普通異なる症状は2つくらいしか出ないのに、今回の症例はナント、症状が4〜5個一気に現れていました。簡単に書くと、異常な攻撃性、尾追い行動、過剰な足先の舐めとそれに続く唇を舐めて見えないものを追う行動、トイレのドアに対する異常な執着、そして人の足先への異常な執着。その犬のトレーナーさんも同伴で来院されました。トレーナーさんがいわゆる「犬を支配下に置くトレーニング」をやっていたらしいのですが、それでは不安症はひどくなるばかりだよ、犬が人間を支配下におきたいから攻撃したりリードを散歩中引っ張ったりしているのではないよ、という話をさせてもらいました。
前にも書きましたが、今、日本の獣医大学の学生さんたちが私の勤める獣医教育病院に実習でみえています。彼らもまた、日本で犬の支配的攻撃行動とか、犬になめられるから犬を支配するようなトレーニングするとか言うことを習ったことがあるし、そうだと思っていたとおっしゃっていました。どうしてこんな科学的根拠のない理屈がこんなに一般化したのでしょう。どうしてそんなに簡単に犬の行動を擬人化して考えてしまうのでしょうか(私も小太郎を擬人化していますが、小太郎が不安なとき、怖がっているとき、痛みがあるときなどはきちんと小太郎と向き合って、猫である小太郎を観察します)。日本はアメリカよりも陽性強化法(褒美を使ったトレーニング)が受け入れられているようですが、何故いまだにチョークチェーンとか、プロンクカラーで、痛みによって人間が犬を支配したがるのでしょうか?だから、強迫性障害のような不安症のワンちゃんが出来てしまうのに。。。