柵をかむ馬

私のいジョージア大学獣医教育病院の獣医行動診療科は犬、猫、鳥だけでなく、馬などの家畜動物も診ています。獣医学生さんの飼っている馬のケーシー君はアラブ馬、17歳。3歳のときから柵を噛むという強迫性障害があります。この柵を噛む行動英語では、cribbingといいますが、日本語では、さくへき行動といった覚えがあります。cribbingは、柵を噛んでいるだけなら大したことはないのですが、柵を噛むときに空気も飲み込むので、センツウ(腸閉塞みたいなものです)を起こすこともあり、そうなると命取りになることもあります。今、ケーシー君はこのcribbing行動をコントロールするために抗うつ剤を飲んでいます。飼い主さんが獣医学生ということで、忙しくてなかなか行動療法ができないので、薬のみで抑えている感じです。この抗うつ剤、今いい感じで効いています。飼い主さんが来ると、興奮して柵をかみ始めるのですが、前みたいに、1日中噛んでいるのでなく、30分位たつとやめてくれるそうです。よかった。
今まで、馬の行動治療は薬が高いためになかなかできませんでしたが、最近抗うつ剤がかなりお手ごろな価格に落ちてきたために、治療可能となってきました。やれ、電気ショックだとか、首の筋肉を切ってしまう手術だとか、体罰などで、やめさせるのでなく、ちゃんと強迫性障害という診断を下した上で、抗うつ剤と行動療法で治せるようになったので、うれしく思います。