お姉さん襲われる

Maxという50キロある9ヶ月のグレートデンが行動学診療科に来院しました。飼い主さんの書く主訴(主な問題)は、「また他人に対してうなった。」としか書いていないので、そんなに緊張しない状態で診察を始めました。もう2年半、プラス大学院時代の経験から、犬の行動や表情やちょっとした動きを見ると、この犬私のこと怖がっているな、などぱっと分かります。Maxくんも、白人女性の学生さんに対してはリラックスしているのですが、私に対しては、なんとなく、不安な様子です。しかし、ジャーキーのお菓子を投げ、なるべく犬の目を見ないように、診察(カウンセリング)を開始しました。どうもMaxちゃんは、トレーナーさんに対してうなったり噛み付いたりするそうなのですが、トレーナーさんは、Maxが3ヶ月の子犬のときから、犬を仰向けに無理にする優位姿勢の訓練や、プロングカラーというとげが首に食い込む形のトレーニング用首輪で、罰を与えるトレーニングをしていたのです。
この痛みを与える、優位行動を人がとるトレーニング法は、犬が人を怖がって人を攻撃するような犬になってしまう可能性があります。Maxもすっかりトレーニングをしようとする人、ちょっとでも彼の前でかがんだり、他人がなでようとしたりすると、その人に対して攻撃をしてくる子になってしまいました。私の外見のどこが悪かったのか、ただ社会化期にアジア人にあっていなかったからか、カウンセリングの後のトレーニングのときに、私に向かってきました。
飼い主さんの前では平常心であるかのように振舞い、分かっていましたから、などといって、落ち着いた振りをしていましたが、50キロの犬(自分と大して変わらない体重)に襲われているときって怖いですね。どうすればいいか、なぜ私にむかっているのかわかっているので、変に動かなければ、噛まれることはないとは思っていましたし、攻撃行動を静めるにはどうすればいいかも分かっていましたけれど、犬と座っている私は目線が一緒ですから、やはりかなり心臓がどきどきしました。
全く、何でこんなになるまで変なトレーニングをしたんでしょうね。