ショックカラーの話

Shock collerとは電気ショックを与える首輪のことで、犬の訓練に使われています。日本にいた頃わたしはあまり使われているのは見ませんでしたが、今はどうなのでしょうか?ここアメリカ、では、これを好んで使うトレーナーさんがたくさんいらっしゃいます。これを読んでいらっしゃる方は、何故わざわざ犬や動物を感電させてトレーニングするの?どうなっているの?と思われる方の方が多いと思いますが、実際使っている人はなんとも思わないようなのです。言葉という武器を使って、いかにショックカラーは痛みを与えるものではなく、ちょっとした刺激を与えるもの、犬の気を引くための道具で罰を与えるための道具ではないと説明します(ちなみにJournal of Applied Animal Behaviour, 2003 でショックカラーは犬のストレスをあげるだけという報告があります)。
動物行動学を学んだ場合、かならず「学習」の理論を学びます。動物の行動をとめるために罰はどのように与えなくては有効性が得られないかを学びます。トレーナーさんが使っているやり方でのショックカラーの応用は理論的にはあまりトレーニングに適した道具とは思えません。むやみに恐怖感を犬に与えるだけになります。ですから私たち行動学診療科はショックカラー、チョークチェーン(首を絞めるようにできている金属製の首輪)、プロングカラー(とげが犬の首に刺さるようにできたチョークカラー)などは使わないように指導していますし、使って犬がおかしくなってしまった場合の治療もします。
しかし、今日、私たちの病院の受付にショックカラーを使うというトレーナーさんの資料が患者さんにお勧めですよ、とおいてあったのを発見しました。私たちの獣医教育病院で仕入れや棚の管理をしている人が実は犬を厳しく(首を絞めたり、電気ショックを与える)しつけるトレーナーさんで(それも30年地元でトレーナーとしてやっている)彼女が自分の仕事でもないのに、教育病院の患者さんに薦めているみたいなのです。
私の診療科のテクニシャンさんも、いきなりテクニシャンのボスに呼ばれて、あなたたちのしている優しい褒美をやるだけのトレーニングは大体いんちきくさいといわれたそうです。教育病院の中の不協和音。。。犬は人間が「ボス」になって痛みを与えて(なめられないように)訓練するものであるというとんでもない逸話が、病院では当然のように、私たちがこんなに教育しているのに、まだまだ古い人間の間ではまかり通っているようです。
いままで、私のボスは丸く治めようと目をつぶってきたらしいのですが、いよいよ法的処置に出るかもしれません。病院では行動学診療科に所属する私たちが行動学のエキスパートであり、いい加減な、科学的根拠のないやり方でトレーニングをやっている備品整理のおばちゃんが口出しできるものではありません。これからどうなるのかしら?そしてもしこれが古い考えを持ったでも権力はある人たちと一部の若い人たちとの間の戦争みたいになった場合、私たちはどう対処すればいいのかしら?
獣医の世界での行動学はまだ新しい学問なので、受け入れられていないのが現状なのでした。